君を忘れない
涙で滲んで見るトラさんは笑っていた。

体を壊したんだ。

本当は笑えるようなことじゃないのに、この人はずっと笑顔だった。

この人の笑顔には強さと、優しさの両方がある。


「この1年間、お前にとって最低の先輩でごめんな」


その言葉を聞いた途端、堪えていたものが堰を切ったかのように溢れ出て、涙が止まらなくなってしまった。


「ご・・・

ごめん・・・

ごめ・・・

ごめんなさい」


もう止めることができそうにないこの涙は、1年間ずっと我慢し続けていた分すべてを出してくれる気がする。

ずっと、こうして泣いていても構わないとさえ思う。


「ごめんなさい・・・

ごめんなさい・・・

最低の後輩でごめんなさい」


何度謝っても許されない。

許されるはずがないのだが、謝らずにはいられない。


「もういい。

もう謝らないでくれ」


トラさんの胸に顔を押し付けられ、ただでさえ強く流れている涙が更に加速していく。



さっきまであんなに綺麗だった星空が涙で滲んでしまってよく見えない。

都会では珍しいくらいに綺麗な星空だった、その星空の下で大学生2人が抱き合って泣いている。

いや、2人だけではなく四盛やかよっぺも泣いていて、大学生4人が都会の星空の下で泣いていた。

1年間我慢し続けた4人の涙が星空を滲ませた。
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