君を忘れない
「あいつ、俺が酒飲めなくてお茶だからって容赦しないんだよ。

めちゃくちゃコール振られて腹ぱんぱんだったよ」


「でも、おかげで真一の周りは誰一人潰れずに最後まで楽しそうだったじゃん」


「そうだっけ?」


そう言われれば、確かにあの日の僕や小山の周りは誰一人潰れていなかったような気がする。


「二人が仲良くすると、トラさんが浪人して私たちと同じ学年だったら良かったのに・・・

て、また思っちゃうんだよね」


七月の暑く強い日差しを見つめるかよっぺの顔はどこか切なく寂しげな顔に見えた。

僕だって、何度かこの4人が同じ学年だったらと思ったことはある。

しかし、きっと今のこの関係だからこそここまで仲良くなったのだろうし、それぞれに色々な出会いがあったのだから、きっとこのままの関係が良かったのだろう。


「おいー。

それじゃ、俺たち仲良くできないじゃん。

それに、そしたら四人の仲間はずれのしばりができなくなるだろ」


仲間はずれのしばり・・・

この言葉を久しぶりに口にした。


一人だけ学年が一つ上の僕


一人だけ歳が一つ下の小山


一人だけ女の子のかよっぺ


一人だけそういったしばりのない四盛


僕たち四人はそれぞれが仲間はずれになる。

特に意味はないのだが、なぜか僕たちはこれが妙に気に入って、よく面白がって言っていたものだ。

誰か一人でも欠けたら、この仲間はずれのしばりは成り立たない。

そうして、四人はより一層仲が良くなっていった。

懐かしい話だ。


「うわっ、それ懐かしいね。

あっ、ここでしょ」


駅からそう遠くもないということもあり、話をしているうちに目的地に着いた・・・
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