君を忘れない
「あと、知多さんのことを『ハマ』って呼んでいるのトラさんだけだよね?」


ハマのことをそう呼んでいるのはゼミのなかでも、恐らくゼミ以外でも僕だけで他のみんなは苗字か名前で呼んでいる。

まあ、それが自然な成り行きなのだろうが。


「それは、最初あいつに会ったとき『ハマダ』って俺に名乗っていたから、ハマってあだ名つけて・・・

それで、引っ込みがつかなくなって、ずっと呼んでいるんだよ」


「引っ込みつかなくなったって、一体どれくらい気づかなかったの?」


「友達の友達として一年の秋くらいに初めて会って、ゼミの面接のときに気づいたから・・・

だいたい一年くらい」


「信じられないくらいの馬鹿だね」


自分でも馬鹿だと思っているのと、この暑さで反抗する気が起きない。



けど、あいつだって悪い。

携帯のプロフィールに濱田慧介で登録していて、そのまま携帯電話の赤外線通信でアドレス帳に入ってきたから、疑う余地なんてないじゃないか。

それでも、一年も気づかない僕は本当に馬鹿なのだろうな・・・

けど、違うあだ名で今更呼んでも違和感がある。



ああ、この短時間で二回も自分を馬鹿と言ってしまった。


「ばーか、ばーか」


そして、かよっぺには二回も馬鹿と言われてしまった。

いや、正確には三回か。


「ははは・・・

って、このやろう!」


「きゃー。

セクハラだよー」


かよっぺの頭にツッコミを入れる。

自分で思っているにはいいのだが、人から言われるのは悲しい。

まあ、ネタということは分かっているのだが・・・

やっぱり悲しい。
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