君を忘れない
「そういえば、これからどうする?

私、今日一日空いているんだよね」


嬉しそうにかよっぺが僕の前に顔を出してきた。

少しだけのけぞってから時計を見ると十一時半くらいになっていた。


「残念ながら、俺はこれから行くところがあるの」


この時間だったら、最初からというわけには行かないが十分だ。


「ちょっとお、折角女の子が空いているって言っているんだよ。

それなのに、その素っ気ない態度は酷いんじゃない」


「今更、かよっぺを女の子として見れと言われても無理だよ」


かよっぺの言葉に笑いながらも、駅へと向かう足の速度を速めていった。


「ああ、いくらなんでもその言葉は更に酷いんじゃない」


(かよっぺだから言えるんだよ)






駅についてバスの停留場へと移動したが、バスが見当たらないので少し待たなければいけない。


「とだ・・・

ぼう・・・

と・・・・・

じょう・・・

いき?」


かよっぺがぎこちなくバス停の行き先を読み上げる。


『戸田ボートレース場行』


戸田競艇場の無料運行バス乗り場だ。

今日は一般戦の開催日であり、しかも優勝戦があるときたら競艇好き、競艇選手を目指している者としては、折角ここまで来たのだから行っておきたい。

と、言っても生田から一時間ちょっとで来れるのだが。



それに、少し気分が落ち込んでしまった。

こういうときは、競艇のモーターの音を聞いて落ち着き、迫力あるレースを見て興奮したい・・・


「戸田競艇場。

競艇だよ。

今日やっているから、行こうって思ってたんだよ」


サークルで競艇に興味があるのは僕だけで、競艇を知って二年くらいだが未だにサークルの人と競艇場に行ったことがない。

というわけでかよっぺとはここでお別れだ。
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