君を忘れない
だけど・・・

怖い。

今は膝だけだが、徐々に自分の体が思い通りに動かなくなっていくのが怖い。

思い通りに動かなくなって、今みたいに自分が変わってしまうのが怖い。

そして、俺はこの世からいなくなり、俺がいなくても世界は今までと変わりなく時が経ち、俺なんか存在していたということを忘れられてしまうのが怖い。



怖い。



怖い。



怖い。



怖い。



怖い・・・・・



ようやく、右膝に感覚が戻り、ゆっくりで不規則ではあるが歩けるようになった。

死が怖いというよりは、感覚がなくなったときに今みたいに考えてしまう自分が一番怖い。

今更、強い人間になりたいとは思わないが、俺はなんて弱い人間なんだろう。

けど、死ぬときは少しだけマシな人間で死にたい。


「マシな人間って・・・

そんなつまらないものになりたいって、思うようになっちまったか」


そう呟き、病室へと戻った。足取りは朝よりも重くなっていた。
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