君を忘れない
世の中は理不尽だ。

なぜ、あんなにもいい奴に病気を患わせるのか。



何の目的も持たずに、ヘラヘラと意味のない毎日を繰り返す若者。



誰かの失言に付け込んでばかりで、結局何も日本を変えることのできない、金だけは余計に貰っている名前だけの政治家。



有名人のスキャンダルを金にしようとハイエナのように這いつくばっているカメラマン。



それらの人なら患っていいと言わないが、その人たちを見ていると無性に涙が出そうになるときがある。

せめて僕が病気になればよかったのに。

僕だって、許されないことをしてしまった人間だ。



もっとも、今のあいつはそんなことなど考えていないのかもしれない。

もしかしたら、あいつのことだからそこまで辛くもないのかもしれない・・・



けど、自分の死が分かったとき、人は辛いと思うのだろうか?

決して、あいつやそんな境遇の人を悪く言うわけじゃないし、僕はまだ自分の死と直面したことなどないから偉そうなことは言えない。

だからこそ、分からないのだ。

辛いとはまた違った感情が出てくるのではないか?

そこが、さっき病室で感じた違和感なのかもしれない。
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