君を忘れない

-6-

今日も暑い日だ。

七月の関東は暑い。

関東に限らず、七月は生まれ育った愛知でも、日本全国どこでも暑い。



この暑さも今年が最後になってしまうのだろうか・・・



やばい、やばい。

また、ネガティブな発想になってしまった。



最近、毎日のように見舞い客が来るから、一人でいる時間が減った。

一人でいるとどうしても怖くなってしまうから、誰かと一緒にいるだけで落ち着くから助かる。

前向きと言えばいいのか、何て言ったらいいのか分からないが、とにかく一人でいる時間が減ったから怖がる時間も自然と減ってきた。


「お邪魔しまーす」


まず、最初に言っておくと、ここは病院だ。

そんなこともおかまいなしに元気のいい女の子が入ってきた。


「お前な、病室に入るのに元気よく『お邪魔します』はないだろ」


「じゃ、暗い顔したほうがいいですか?」


「極端だな。

その前にまずノックをしてから入ってこいよ。

他の患者さんがいたらどうするんだよ」


「すいませーん」


軽く首を下げて、笑顔で舌を出しながら謝る。

反省などしていないような顔だ。

けど、この明るさが藤田のいいところなのだろう。


「あれ、一人?

ヒメは?」


「私とトラさんが常に一緒にいるとは限りません」


「喧嘩でもしたの?」


「喧嘩をしてもしなくても、私はあの人の保護者でも彼女でもなんでもないですから、常に一緒じゃないです」


そうなのか。

考えてみれば、あの子と付き合っていたときからゼミでは常に一緒にいたな・・・



じゃあ、ヒメはまだ自分を許せていないのだろうか。

あいつが自分を許して藤田と付き合ったと、勝手に俺が都合のいいように考えただけだったのか・・・
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