君を忘れない
体育館の扉が開き、みんな騒ぎながら中に入りコートの準備をする。

説明は6時からだから、それまでに基礎打ちは終わらせておこう。

辺りを見渡すと、他の学年に比べると2年の表情がどこか硬い。

一体、何人が今日で最後となるのだろう・・・

この考えはさすがに失礼な考えだったか。



6時になると2年がニ階の観客席に集まっている。

やはり、みんな表情が硬くなっている。


「かよっぺ、もう行くよ」


「先に行ってて」


女子会長のかよっぺを呼んだが、彼女は慌ててロッカーに走っていく。

説明するだけなのにわざわざ着替えるのか?



二階に上がり、観客席に座っている2年の前に立つ。


22人。


この時点でこの人数はかなり少ない。

もしかしたら、いや、きっと最終的には10人台になるだろう。

そうすると、運営していくのは大変だな・・・





「会長はみんなも何をするかっていうのは言わなくても分かっていると思うから、簡単に説明するよ。

とにかくサークルにできる限り来る。

それだけだから」


本当は毎回来いと言わなければいけないのかもしれないのだが、ほんの少し、本当に少しだけ優しさが出た気がする。


「会長になりたいって考えている人は相談に乗るし、色々教えるから俺に直接言ってきて」


我ながら、本当によく簡単に説明したものだ。

けど、これ以上は何も浮かんできやしない。

果たして、この説明で何人の人が会長をやりたいと思ったか。


「会長は黙って私について来い!

って感じでいいと思う。

だから・・・」


『誰よりも楽しめ! by藤田佳代』


でっかく太い字で書かれた画用紙を無言で頭の上に掲げ、一礼してかよっぺの説明は終わった。

みんな、俺の時とは違って笑っていた。

本当なら俺だってこんな説明をしたかった。

きっと、1年前の俺ならできたのかもしれないな・・・
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