君を忘れない
電車ライブの話のあとに、こんな話をされるとちょっと恥ずかくなる。

けど、そんな格好いい夢を持っている藤田が、電車ライブを格好いいと言ってくれたのだから少しは自慢げに考えよう。


「トラさんも夢に向かっているし、知多さんにも応援されているし、私も本格的に目指してみようと思います」


さっきまでとは違い、きりっと引き締まった顔になった。

ほんの少し前までは寂しい顔をていたのに、もう前を向いて進もうとしている。

本当にこの子は強く、そういうところもヒメにそっくりだ。


「そうか・・・

じゃあ、今からそれは目標だな」


俺は・・・

もう長生きできない。

命が短いながらも些細だがまだ夢はある。

けど、それに向かって進むことはできない。


「その夢に一歩でも自分が進んだとき、それは夢じゃなくて目標になる。

目標ならば、それに向かって最大の努力をしなければならないからな。

目標に向かって頑張れよ、藤田」


その一歩が進めない俺には、もう夢しかない・・・

けど、それで構わない。

ずっと、俺は夢を見続けていたい。


「俺は・・・

ずっと夢を見続けるよ」


ついつい弱音とも取られかねない言葉を口に出してしまった。

こんなことを言ってしまったら、藤田に余計な心配を掛けてしまうじゃないか。
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