君を忘れない
「知多さんも目標です」


真っ直ぐな瞳でこちらを向いて言ってきたその言葉は力強かった。


目標ならば、それに向かって最大の努力をしなければならない


さっき俺が言ったばかりの言葉だ。

俺はもう最大の努力をできるものがない。



生きるための努力?



治療で注射を打ち続け、ベッドで横になった状態が続くのであれば好きなようにして笑って死にたい。


「俺にもう目標はないよ。

夢だけだよ」


真っ直ぐな瞳から目を反らし、窓の外を見て答える。

外はさっきまでいい天気だったのに、雲は黒く、わずかだが雨が降っているようだった。

いつの間に天気が変わっていたのだろう。


「目標です」


右手の人差し指を俺の額に押し付けて、さっきよりも力強く言ってきた。



全く・・・


「そうだな。

目標だな」


好きなようにして笑って死にたい。

それが、今の俺の目標だ。

目標に向かって最大の努力をしなければならないな。
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