君を忘れない
・・・・・



ヒメ・・・

悲しいことに結果的にはなってしまったけど、ちゃんとあの子には伝わっていたよ。

あの子もお前の考えを、お前のことを分かってくれていたんだ。


「俺よりも、あいつのほうが辛い思いしているのかもしれねえな」


近いうちに歩けなくなり、体を動かすこともできなくなり、そして死ぬ。

死んだあとなんてどうなるか分からない。



けど、あいつはよほどのことがない限りはまだまだ生き続ける。

生きている以上は、必ずあのことと付き合っていかなければいけない。





ぎこちない歩き方だが、一緒に廊下に出る。

さすがに階段はちょっとキツイか・・・


「わざわざ、ありがとうございます。

また、お見舞い来ますね」


「おいおい、あんまり無理しなくていいよ」


「無理じゃないです。

知多さんと話すの、凄い楽しいから」


そう言ってくれると、気分が少し軽くなる気がする。

一階と二階の中間くらいの位置になると、こちらを振り返り笑顔で手を振ってくる。

その笑顔と、夕陽の光を反射した廊下が眩しく映り、少しだけだが涙が出そうになってきてしまった。



涙をこらえて階段を降りていく藤田を見送り、またぎこちない歩き方で部屋に戻る。

まともに歩くことができなくなってきた自分・・・



そろそろかな・・・・・
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