もしも彼が。
「携帯鳴ってんぞー」
「俺のじゃん」
ディスプレイを見ると、魅咲の文字。
「やべぇ…」
高鳴る鼓動。
落ち着け俺。
「…はい」
《あ!侑摩?》
「俺の携帯なんだから俺が出るに決まってるでしょー」
まだ魅咲には本性見せないつもり。
でも時々出ちゃうんだよな。
《そーだよね!》
「それより、どうしたの?」
《あ、うん。あのね、私侑摩の部屋にピン忘れちゃったみたいなんだけど…》
「あ、あるよ。俺持ってるー」
《よかった!》
「侑摩?誰と電話?」
めんどくさい奴が話しかけてきた。
《じゃぁ預かっててくれる?》
俺が預かれば、また会える?
会ってくれる?
《次会うとき、取りに行くね》
「いつ?いつ会える?」
《いつでもいいよ》
電話越しに笑う彼女の声が
「ほんとかっわいいね」
《えっ?》
「なんでも無い!じゃこっちから電話するから待ってて」
《うん、待ってる》
やばい。
また会える。
魅咲に会える。
一人笑った俺を、誰も見ていなかった。