もしも彼が。
「魅咲?どうした?」
頭を撫でる彼の手が優しくてまた涙が出てしまう。
パパとは違う。
「魅咲?彼氏?」
ママが笑顔で玄関まで来る。
「夜遅くにすみません。俺ついつい会いたくて」
「あら、そうなのー」
偽りの笑顔で侑摩に接しないで。
侑摩も私が呼んだなんて言わず
自分が、自分が。
って説明している。
「私がっ…!私が呼んだの!もういいでしょ!?」
足に力が入らなくなってしまった私は
ぺたん、と床に座り込んでしまった。
「魅咲!」
弘樹が駆け寄ろうとするが
私の前にすっと影が出来た。
「魅咲、部屋まで運ぶよ」
お姫様抱っこをする侑摩。
「い、いい…」
「良くないでしょー?いいからいいから。ね?」
「…ん。あり、がとぉ」
私は侑摩の首筋に手を回して抱きつくと
「本当可愛いよね」
そう呟き、
「じゃ少し上がらせてもらいます」
笑顔でママたちにあいさつして階段を上る侑摩。
「部屋、どこ?」
「一番、奥…左側」
「了解」
私は侑摩に体を預ける。
「ごめんね、ありがと…」