もしも彼が。

「物足りないような目。」

「ふっ…!」


キスを突然され、頭がぽーっとしてしまう。


「じゃ俺行くね」

「……うん」


階段を下りる音がやけに響く。

私は侑摩が好き?

分からない。

私は何を求めているの?


「じゃ、またね」


玄関の扉が開くと
やけに冷たい風が私の頬を撫でた。


「こーら、暗い顔しないの」

「し、してないもん!」

「強がっちゃってー可愛いったら」

「可愛くないもん!」


まだもうちょっと。
傍にいて…


私はいつの間にか侑摩の服を
キュッと掴んでいた。


「魅咲?」

「ん?」


俯きながら答えると涙が出そう。


「魅ー咲?」

「んー?なぁに?」

「いつでも俺を呼べよ」


いつもより声の低い侑摩の言葉。


「う、ん…」


心に刺さって痛い。




< 49 / 50 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop