海と微熱の狭間で
可純の視界にいっぱいのベビーブルーの花が写った。


「へ?」

次に葛城の顔が見えた。にこにこと笑っている。

「吃驚した?」
葛城の手には名前の知らない青い花と白いバラ、そしてかすみ草をふんだんに使った花束があった。

全体に大人っぽい花束に可純は頬を緩ませた。


「どうしたの?それ」
葛城は花束を可純に渡した。
花を頬に寄せる。

「可純にプレゼント」

刹那葛城は瞳を濁らせた。勿論それに気付かない可純ではない。

「…葛城くん?」
失望と期待。不安と焦り。そんなものを入り交ぜた表情。


葛城は可純の前の席に座った。


「…俺といて、幸せ?」
葛城は可純を見ないで問うた。
可純は首をかしげるような仕草をした。

毎日毎日仕事だらけだったけれど、家に帰ったら葛城がいる。
そして彼だって多忙なのに今日みたいな安らぎをくれる。

「んー…幸せね。葛城くんは?」
葛城はホッと安堵した様だ。
それが可愛らしく思えて、可純は優しい気持ちになる。


「うん、俺も。可純といると心底安心する」
可純は頬が熱くなるのを感じた。
私も、という意味を込めて頷く。

「で…本題はここからなんだけど…」
葛城はまた先程のような表情をして、上着のポケットから何かを取り出した。

取り出したそれを膝の上で握り締めているのか、机の影で隠している。


葛城は上目遣いするように可純を見た。

「…とってもとっても好きなヒトがいるんだ」

可純は何とも言えない顔をした。
よくわからないのが本音だった。

「それで、今からプロポーズしようかと思ってるんだけど………どうかな?」

可純は呆然とした顔をしてただろう。

葛城は机の影から何やら白い小さな箱を取り出して、机に置いた。


可純はそれを手に取り箱を開けた。

銀色の指輪に付いたダイアモンドがキラリと光る。
シンプルで、キレイなものだった。



「…うん、いいと思う」


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