海と微熱の狭間で
原野は悲しそうな表情を見せた。


「…悠沙の中での憎悪は自分なんだよな」
可純はハンドルを強く握った。

「…私、月帆さんも深島さんも…葛城くんを大事に想ってると思うんだ」


原野はぎゅっと瞼を閉じた。
「だけど」
搾り出すようなかぼそい声。
原野は自分が情けなくて仕方なかった。


「悠沙はそれを拒み続けるよ」
俺たちがどんなに悠沙を想い続けても。


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