海と微熱の狭間で
たっぷりと二度寝をしたら、昼時になっていた。

可純は温い布団からひょっこり顔を出して、リビング用のテーブルでパソコンを弄ってる葛城を見た。

とっくに起きていたらしい彼は眼鏡をかけているので仕事でもしてるのだろう。
近々葛城の喫茶店は群馬にチェーン店を出すのだ。


物音で気付いたのか、葛城と目があった。

葛城は優しく目を細めてベッドに近付いた。

「起きた?よく寝んなぁ」
「んー…」

可純は窓をちらりと見た。

冬に近付いてきた為か、一時を少し過ぎただけなのに太陽が低い位置にある。


「お腹空いた…」
ココア淹れて、とにっこり笑って要求した。
葛城は呆れたように可純を見たが直ぐにキッチンへ向った。


「お腹空いたんならどっか食べにく?お寿司食べたいって言ってたし」

可純は比較的少食なので、昼もココアとパンか何かでもいいかと考えていた。

何よりベッドから出るのが辛い。

まだ温かい部屋でも、可純は自分の体温で温もってる布団から出たくなかった。


「お寿司かぁ…部屋から出るのやだな」

ボソリと呟いた。
葛城が困った様に笑う。

「ファーストフードとか言うなよ?俺は日本食が食いたいの」

可純はまだぐずぐずしぶった。
葛城がとびきり優しいから、可純がたまに我が儘になる。

葛城は出来たココアを可純に渡して、パソコンの電源を消した。


「美味しい寿司屋行こ、な?可純の好きな茶碗蒸しとか…いろんなの食べれるぞ」
可純はココアの入ったマグカップに口を付けながら葛城を見上げた。


「葛城くんもお腹空いてる?」
「すっごく」

甘いココアに可純は頬を綻ばす。


「じゃ行く」

デザートも頼んじゃおうと可純は心のなかでほくそ笑んだ。



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