海と微熱の狭間で
朝海は上気させて、リビングルームに戻ってきた。

丘生も随分長い昼寝から覚めたようで、文子に連れられ入ってきた。

朝海は泣きやんでる月帆を見て輝くような笑顔を見せた。


「おかーさん!もうだいじょーぶなの?」
月帆はいとおしい我が子の額にキスを贈る。

「うん、朝海くんのくれた椿のお陰かな?ありがとうね」

大好きな母親の温もりに朝海はぎゅっと抱き付いた。

「わ~いっ」


丘生が文子の手を離し、深島が座っているソファーの横に座った。
「おとーさんおかえりなさーい」

手には可愛いティディベアを抱えてある。

深島もにっこり笑いながら愛娘にキスをした。

「ただいま。いい子にしてたかい?」
丘生はうん、と花のように愛らしい笑みを浮かべながら頷いた。

長くてふさふさしてる睫毛を眠たそうに何度も瞬きしている。


「ね、丘生もだっこしてほしい」
甘えたい盛りの丘生は兄がだっこしてもらってるのを見て嫉妬したのだろう。

深島は喜んで白くて柔らかい娘を膝の上にのせた。

白く短い腕が深島の首に回った。



< 37 / 59 >

この作品をシェア

pagetop