海と微熱の狭間で
次に可純の意識が戻ったのは、唇に違和感を感じたときだった。

ジンと痺れるような感触がした後、下唇を何かで挟まれたような感触。





…さっきのは何だったのだろうか。
寝起きは頭がぼうっとしてしまうのだが、それでも懸命に考える。
未だじんじんと痺れる唇…。


ゆるゆると瞼を開いた。


「可純ーそろそろ起きろよ。朝食はバイキングだってー」

葛城がワイシャツを着ながら言った。
準備万端な葛城に可純は尊敬してしまう。

「…起きてるもん」
のそのそと起き上がる。
葛城が爽やかに微笑んだ。

「おはよ」
着替えが終った葛城はくしと服を持って可純が乗ってるベッドの横に腰を落とした。

前髪を掻き上げられ、おでこにキスされる。
さっきまでの疑問はどうでもよくなっていた。


「ほら、セットしてあげるから顔洗っておいで」
「ん」

可純は気だるげに立ち上がったが、ふと思い立って可純は振り返った。

「うん?」
優しい仕草で首をかしげた葛城に、可純はにっこり笑った。

「言い忘れてた、おはよ」



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