不良彼氏と胸キュン恋愛【完】
「……――まだ、いたのかよ」
「流星……?なんで戻ってきたんだよ……」
屋上の扉を開けると、タバコをくわえていたヒロヤが振り返って目を丸くした。
「花音に言われたから。お前の話、ちゃんと聞いてやれって」
「……そっか」
「それに、さっき、お前の妹にも会った」
「モモに?」
「あぁ。給食費を俺が払ったとか、プレゼントがどうとかって意味の分かんねぇ話ししてた」
取りだしたタバコに火をつけながらそう言うと、ヒロヤは一呼吸置いて話し始めた。
「流星と一緒にバイトしてた頃、親父が突然家の金を持って消えたんだよ。うちの親父、小さい会社の社長しててさ。今まで金に困ったことなんてなかったのに……」
ヒロヤの話はこうだ。
ヒロヤの親父の会社が倒産して、親父は借金取りから逃れるように一人家を出た。
それから少しして、家計が火の車であることを知った。
高校の授業料だけでなく、妹の給食費までも滞納していることを知ったヒロヤは焦った。
給食費を払う期限まで一週間もない。
慌ててバイト先の店長に給料を前借することを頼んだのの呆気なく断られた。
「あの日、バイトの休憩中に母親と電話で話してたんだよ。何とか5000円を今週中に用意しないとって。あの頃は、食うのにも困るくらい貧乏だったから」
「……5000円?」
「あぁ。でも、5000円を用意する当てなんてないし、人に借りるのも嫌でさ」
ヒロヤはポリポリと頭をかきながら続ける。