「マッチを買いませんか?」
「一本も…………入ってない…………?」
「空箱を買ったのかしら、残念ねえ」
「いや、中身は確認した…………上等なマッチだとは思ったが、これほどまでとは…………」
「言ったじゃない。アンティークで魔法がかかってるのよ」
不思議そうにしている男を眺(なが)めている。
こうなったら後はカモネギのようなものだ。
シャルロットは空のマッチ箱を手に持ち、振って見せた。
「じゃあ、あたしと賭(か)けをしましょう?」
「…………どんな賭けだい」
「このマッチ箱の中身を、当てるのよ」
「………………」
疑い深くなっているが、手法の見抜けない素人(しろうと)がいくら考えたところで、どんなに考えたところで浅知恵でしかないのだ。
奇術師は自在に総てを操(あやつ)ることができるのだから。
「手品、だね」
「そうよ。あなたからお金はとらない。ただ、このケーキが美味しかったからもうひと切れ貰(もら)うわよ」
「なるほど。それじゃあ、君は何を賭けるんだい?」
「金貨を三百枚」
「…………まいったなあ…………」