「マッチを買いませんか?」
シャルロットはドアを開けて雪の降る静かな夜を歩いた。

月が見えていて、ちょっと欠けているそれは不吉な運命を物語っているように思えた。

タロットカードでも月のカードはそれほどいい意味を持ってはいない。しかし。

シャルロットは既にどうやってマッチを売ろうか、ということを考えていたのだった。

「ざっと数えてみると小箱が百個、といったところかしらね。マッチ箱はそんなに高いものなのかしら?」


シャルロットは次第に強くなる雪に今日の日のことを考えた。

今日は幸せな日だ。

赤い衣服を纏(まと)った老人が幸せを届ける日。

シャルロットはそんな老人が実在するとは考えていなかったが、もしもいるのならば「どうして自分の所には来ないのか」ということを考えていた。

本当に静かな夜、街を歩いている人間はほとんどいない。

少数の人間たちが忙しくプレゼントを持って歩いているのだけが見える。


シャルロットはとびっきりの笑顔を以(もっ)てマッチを売り始めた。

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