浮気な彼
雪乃side
----ぎゅうっ
強く抱き締められた
菊野くんの腕の中
----トクッ
胸の鼓動が高鳴った
菊野くんの温かさに................。
「.......っ、.......」
下唇を噛み締め声を殺した
静かに涙を零していた菊野くんは
泣き止んでいて
ただ、ずっと抱きしめていてくれた
何であの時私は菊野くんを抱き締めたんだろう?
気付いたときには
いつもより小さく
弱弱しい泣き顔の菊野くんを
自分の腕に、閉じ込めたんだ
「..........雪乃、ありがとう」
何についてのありがとうなんだろう
わからないけど
「蓮くん。ありがとう」
そう言って私は泣き顔で菊野くんを見上げた
見上げた蓮くんの顔は
柔らかく微笑んでいて
嗚呼、やっと会えた。
やっと、貴方に触れられる
重なり合う2人の影
目を瞑って只、受け入れるだけ。
この切なくて愛しい気持ちは
私の物なのかな。