浮気な彼




「ごめん....あり、がとう.......」

情けなくも俺の声が震えた


「菊野くん、泣かないでよ、」


俺は涙を流していて

そんな俺を包み込む様に細っこい腕が抱き締める

その温もりは優しく俺を包んでくれた


「菊野くん、好きだよ、好きなの」

強く抱き締める雪乃。

俺はそっと抱き締め返した


「俺も、俺も好き.......好きだ雪乃」


ぎゅうっと抱き締める


「..........ありがとう、雪乃」

強く、強く。

「........苦しいよ、」

「........ごめん」

苦しいと言っている、だけど俺は力を緩めなかった

どうやったら雪乃を安心させる事が

できるんだろう、そう思った


「........ん、............連くん、」

「........え?.......」

小さい声でよく聴こえなかった


「.......雪乃今なんて.......?.......」

「..............もう、言わない」

そう言って恥ずかしそうに俯く雪乃

「..............雪乃?」

心配になった俺は身体を離し雪乃の顔を覗き込んだ


「.......っ!.........は、恥ずかしいから、.....」

「.........もう一回だけでいいから.....な?」


お願い、という様に言った

すると、諦めたのか顔を赤くして

「..........蓮くんっ.........」

俺の名前を呼んだ



「っ...........雪乃...」


俺は可愛くて仕方が無い雪乃をぎゅっと抱き締める


「ん......」

それに応える様に雪乃が抱き締め返してくれる

俺は雪乃を見詰める

視線が絡み合い

ゆっくりと、雪乃が目を閉じる

俺は応える様にゆっくりと、顔を近付けた

だが、そこで最終下校のチャイムが鳴り響く




「「........あ........」」



「ぷ、....はははっ......!!..」

雪乃が笑い出す

「ちっ.....タイミングわりー.....ま、.......帰るか雪乃!」

「...ふ、そうだね、帰ろう菊野くんっ.......!!」


菊野くんに戻ってる気がするけど


"幸せ"だから、


―――いっか!

 

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