浮気な彼



「.........どうしてっ........私を見つけ.........たの?.......っ」

ぷくっと膨らんだ小さなさくらんぼの様な唇がぱくぱくと動いて

泣きながら声を震わせていた



俺にもわかんないよ

もしからしたらって

何の根拠も無いんだ


「俺にも、わかんねえ..............無事で、良かった........っ.......!!」


俺は安堵の息を漏らした

 
「...............なんで優しくするの?」

雪乃は

大きく、くりくりとした瞳にいっぱいの涙を溜め

か細い声で聞いてきた



「..........雪乃」

 
「どうしてっ----------!!」


声を震わせて、壊れそうな声で

その姿に俺は全てを悟った






あぁ、不安だったんだ

雪乃の性格じゃ

全てを一人で抱える

なにかも全て閉じ込める

-------------心の中に

「.........あのなぁ、雪乃?.......泣けばいい、俺の前じゃ泣けない?お前はどれだけ不安にしてくれんのよ、.........俺を信じてよ、」


溜息混じりにそう言って

雪乃の頭を優しく撫でた

"大丈夫"だと、伝えたくて



「も、........泣かないから、ごめんね.......大丈夫ッッ.......!」


嘘吐け。

そんな泣きそうな顔で

泣かないなんて言う訳?



雪乃が泣けないならば

泣かせてあげるよ、なんて

不安も苦しみも

全て俺が

取り払ってやるよ

お願いだから

そんな顔すんなよっ-------



 


< 99 / 113 >

この作品をシェア

pagetop