わがままな彼女。
今まで十六年間、熊本弁で過ごしてきたから、今更癖はぬけない。

「おぅ!りょーかい!」

君は優しくそう微笑んだ。


「あ、俺は恒也。中地恒也(こうや)」

―…恒也。

それが君との出会いだった。

「こう…や」

「ん!!呼びすてでいーよ!」

「…よろしく。…あ!!恒也、職員室どこ!?」

それが本題。

「おー…。連れてってやるから、ついて来い!」

そう言って、すたすた歩き始めた恒也。

「あ、うん!ありがと」


職員室まで、そう遠くはなかった。

「ここ。えっと…学年主任は柏木だから…かーしわーぎせーんせーい!」

「ひゃぁ!?」

思わず叫んじゃったし!

声、ばかでかい。

「なんだ中地!」

「転校生、連れて来ました。」

美愛の事、だよね。

「お〜、ご苦労さん。じゃ、お前は行ってよし!」

そう言われて、渋々教室に戻っていく恒也。

…嵐みたいな人。

それが美愛の、恒也に対する第一印象だった。

いたらいたで騒がしくって、去った後は、急に静かになったからか、少し淋しさを感じる。

「…恒也!」

美愛の呼びかけに振り返る恒也。

「ありがとう!!」

職員室に案内してくれて。

友達になってくれて。

美愛に笑いかけてくれて。


「おー!じゃぁな、美愛!!また会えるけどなー!」

「うん!」

「同じクラスだといーなー!!」

「そーだね!」

本当に、そう思うよ。

「また!」

「またね!!」

この時の恒也の言葉は、次があるみたいで、嬉しかった。


―…美愛って、単純だぁ。


嵐みたいなあの人ば、たった数十分で好きになった。


どうしようもなく、惹かれてる自分がいた。

―…初恋。

美愛の初恋は、恒也ばい。

初めてなはずなのに、恋ってすぐオチるもんたいね。

あぁ。


好きだよ、恒也。


ねぇ恒也…?

もしもあの時、美愛が恒也に、行かないでって言う事が出来とったら。

未来は変えられたとかな?

二人の未来は。

もっと、明るいものに。

なっていたんだろうか。

きっと…。

変わ
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