涙人


亜由那の家は、あたしの家から走れば10分。


ハアハア息を切らしながら志帆に電話を書ける。


「志帆っ………何でっ……出な…いのっ!?」


何回掛けても繋がらない事に苛ついて、ケータイを上着のポケットに突っ込んだ。


「亜由…那っ!!」


亜由那が一人暮らししているアパートの階段を上りながら、亜由那の名前を叫ぶ。


「濱瀬」の表札が目に入った途端、あたしはドアに手をかけた。


…思った通り、鍵はかかっていない。


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