結婚式

「国の為と了承したこの結婚ですが、もう従えません。僕は、愛する人と結ばれたい」


アスランの言葉が会場内の喧騒を割る。
誰もが彼の言葉に凍りついた。

「誓えません。国の平和のためでも、誓う事はできません」


沈黙。
アスランはアンジェラ姫の方に向き直る。

「申し訳ございません」

深々と頭を下げた。


結婚の拒否。
新郎が突然の婚約破棄。

一歩間違えればまた争いが起きるかもしれないできごと。



「ジュリア、お前からもアスランを止めてくれ!」

アスランの父は何も知らずジュリアに命令した。
ジュリアはアスランの幼なじみであり、彼女の言葉なら聞いてくれると思ったのだ。

ジュリアは、おずおずと立ち上がる。
アスランはまっすぐこちらを見つめていた。



「……貴方は……アンジェラ姫と結婚すべきです」

震える声で言った。
自分の為に結婚を断るとまで言った彼に、自分からそれを止めろという。

本当は自分だって、この結婚を反対したい。
だが、それでも……。


「本当に、そう思うか?」

アスランは落ち着いた様子でそう問う。


「…………」


ジュリアは黙り込む。

国の為にも、家族の為にも、アスランは結婚しなくてはならない。
頭ではそう理解している。


参列者の視線が、ジュリアに注がれた。

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