結婚式

「いよいよ、明日ですね」

「止めてくれ……」

彼女もまた先ほどのメイドと同じようなことを言う。
それを伯爵が止めても、彼女は聞かない。


「アンジェラ姫はとてもお美しい方だと伺っております。旦那様にふさわしい方……」

「止めてくれ」

「美しいお姫様。才気あふれる旦那様。これほどふさわしい二人など他にいませんわ」

「止めろ……」

彼女は伯爵の制止など聞かない。
紅茶を注ぎながら、なおも続けて行く。
伯爵の声が震えていることに気づいても、止めない。


「お二人の結婚はきっと運命…」

「ジュリアッ!」


耐えきれなくなった伯爵は立ち上がる。
その姿に、彼女は一瞬言葉を止める。だが、それでもまた次の言葉を紡ごうと口を開く。


だがその前に伯爵はその口をキスによって塞いだ。


「お、おやめ下さいっ!」

驚愕し、そして彼女は伯爵を突き飛ばした。
突き飛ばされた勢いのまま、伯爵は後ろのテーブルに体を打ちつける。


「……あっ」

後悔に彼女の顔は染まる。
慌てて駆け寄るが、伯爵は手で制した。

そのまま黙って起き上がり、彼女を通り過ぎる。
ドアの前に立ち、


  カチャリ……――


鍵を閉めた。

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