結婚式
「……!」
「二人きりだ」
伯爵の声が部屋の中でのみ響く。
誰も干渉してこない。二人だけの空間。
「……愛してる、ジュリア」
ストレート過ぎる言葉。
彼女、ジュリアは身を強張らせ、首を振る。
受け入れてはならない。
伯爵は明日、結婚式を挙げる。
「おやめ下さい……」
拒絶する。だが、そんな言動とは裏腹に、目は彼に釘付けになっている。
目の奥が熱い。視界が滲む。
「私は、ただの……使用人です」
「だが俺の幼なじみだ」
彼の眼はまっすぐ彼女だけを映している。
その視線が、まっすぐすぎて、受け止めきれなかった。
「……俺は、ジュリアが好きだ」
そして、苛立ちさえも胸に芽生える。
雫が、目からこぼれおちる。
ジュリアは彼を睨みつけた。