結婚式


「う、うぅ……」

耐えきれなくなって、彼女は泣き崩れた。


「……う、うぅぅ……っ」

泣き崩れる彼女の肩に手を置く。
優しく抱きしめるのは、今の彼女には酷だ。


「なんで……」

涙に震える声が聞こえる。
アスランは彼女の言葉に耳を傾ける。


「なんで、アスランなの……。どうして、私は使用人なの……。なんで、なんで……」

今まで押さえつけていた感情が抑えを失い、あふれ出る。
アスランはただその言葉に、相槌を打つくらいしかできなかった。



「……アスラン……」

涙で崩れた顔を上げる。彼の顔がそこにあった。
言ってはいけない言葉がある。だけど、言ってはならないのに、言わずにはいられない。



「結婚しないで……っ」


素直な気持ち、純粋な気持ち。


だけど、現実は残酷だ。


明日、彼は結婚する。

< 6 / 20 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop