ペテン師の恋
でも、そんな朱一の皮肉にも腹を立てなくなった。






彼の皮肉は、もしかしたら、真実を怖がって、自然と自分を守るために、あえて悪役になっている…そんな気がした。






私は貴方を憎めないよ。






「今は、騙してもいいよ。でもいつか、本当の貴方もみてみたいな」






わざわざ騙してもいいなんて、そんなことを伝えるなんて、バカな女だって自分でもわかってる。






「もう、揺るがないし、無理に求めない」






私は、朱一の頬に初めて触れた。






「朱一が好きよ。あなたがペテン師でもね」






そして、私は軽い口づけをした。






自分からキスをするなんて、邪な気持ちなくするのは初めてだった。





< 128 / 278 >

この作品をシェア

pagetop