ペテン師の恋
その日、聖は美里の家に泊まった。






母からのメールは、父親になる奴と会う日時と場所だけだった。






美里はため息をつき、メールを削除した。






しかし、嫌でも会わなくてはいけない。何故か母の押し付けを拒めない自分がいる。







嫌いな母のはずなのに、何故逆らうことが出来ないんだろう。






知らぬうちに、親子の格差を感じているのかもしれない。






美里は、複雑な気持ちを抱え、眠る聖の寝顔を見つめた。






聖がいるなら、美里は充分幸せだった。






今まで知らなかった幸せを与えてくれる、大切な人。






彼を失ってしまったら、この先、美里は自分が幸せになることはできないと思っていた。






愛しい人…






そんな言葉が頭に浮かんだ。






そして、隣に入り、美里はくっつきながら眠りについた。







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