ペテン師の恋
少しの間、三人は無言で料理を口にした。







気まずい雰囲気を壊そうと、橘が美里に話しかける。






「籍を入れたら、四人でくらしたいと思ってるんだ。家も、新しく購入するつもりでね」







金持ちアピールでもして、自分の気をひこうとしているように、美里はとらえた。






店なら、そんな話しでも、愛想よく聞くが、こんなお金も入らないのに、親父の相手は美里にはできないし、したくもなかった。







「お構い無く、母とは親子としての暮らしをしたことも、望んだこともありませんので、私は今のまま、一人暮らしします」







きっぱり言う美里に、また、母親は目の色を変えた。






「美里、いい加減にしなさい。橘さんに失礼でしょ!」






そんな、怒る母親を橘は笑顔でなだめた。







「そうか、うちの息子もきっと君と同じことをいうかもな。もう、来る頃だが…」






そういって、襖を気にする橘。







丁度、店の人が誰かを連れてきた足音が聞こえた。





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