ペテン師の恋
「そんなこと、私だってしたくなかったよ!」







怒鳴る涼子の腕を力ずくで払いのけた。







「聖は、まだ高校生なんだよ…責任を負わせるつもりはない。だから、せめて、産むことだけは伝えさせてもらったの」







美里は涙で、視界がよく見えなくなっていた。ただ、辛くて、切なくて、やるせない。







今までこんなに感情的になることだってなかった。







涼子も、美里の言葉を理解して、冷静に努めた。







「ごめん…じゃあ、これからどうするの?」








「マンション変えて、仕事先も変えるつもり。お金はあるからさ、ただ、ここでは有名になりすぎたから、地元離れるよ」







涼子には、ひき止めたくても、そんな言葉は言えなかった。







真っ直ぐな瞳で、決意した表情で言う美里を、止められるはずもない。








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