ペテン師の恋
ママは、私の背中を押してくれた。







「じゃあ、私、帰るわね。あとは朱美に任せたわ」





ママは優しい笑顔で私の背中を押してくれる。朱一が安定するまで、側に居てくれる優しい母代わり。







「ママ、ありがとう」







感謝の言葉は、何度言っても足りないね。







でも、いつか、恩返しできたらいいな。







私は、看護師に付いていき、朱一の病室へと向かった。








304号室、桐崎朱一







一人部屋の病室に朱一はいた。







「それでは、何かありましたら呼んでください」







「ありがとうございます」







看護師が出ていき、私はベッドの横にある椅子に腰かけた。







横には小さい寝息をたてる、愛しい人。







私は朱一の手を握った。 ぬくもりを感じることに、ようやく安心に確信を持てた。







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