ペテン師の恋
「なのに、俺は、気づいたら、朱美から目が離せなかった。強くて弱い、綺麗で、孤独を君は乗り越えることができる凄い人」








朱一は、私の瞳をしっかり見つめた。握っている手にも力がこもる。








「そんな女性に出会ったことなんてなかった。好きにならないわけがないだろ」









えっ…








私は、朱一の言葉の意味を、自分なりに理解する。すると、嬉しさが込み上げてきた。








「朱一、それって…」








ちゃんと聞きたい、曖昧な言葉じゃなくて、伝えて欲しい。








「朱美を愛していました」







私は泣きながら、寝ている、朱一の胸元に顔を埋めた。








「嘘じゃないよね?私も、愛していていいんだよね?」








朱一は優しく私の頭を撫でてくれる。







「当たり前だろ?」








そして、片腕で私を包んでくれた。大きくて、温かい腕の中に、私はいるんだ。







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