ペテン師の恋
私は、ゆっくり頷いた。









「そっか…。あんまり、彼のいい噂は聞かないから心配だけど…」









聖は弱々しく言った。









朱一は女関係の噂が、陰でたくさんあった。









騙す男をしていた聖も、似たような彼を愛したことに心配はするだろう。








「始めはね、私も騙そうとしている彼に気づいていた。彼の思い通りにならないように、避けていた。だけどね、初めてあった時から、もう好きになってたの…」










もう、隠すことすらできないくらい、私の中で大きな存在になっていた。










「だから…、彼は急に自首したのか…」









聖の言葉に、今度は私が驚き、聖の顔を見た。









だから、自首した?









「おかしいと思ってたんだ。もう何年も経って、事故死で済まされた事件を自分から引き出したんだから」










聖の表情には、何も憎しみや怒りを感じることはなかった。






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