ペテン師の恋
「したくしなきゃ」




私は気をとりなおして、洗顔をすませると、化粧水をつけてからリビングへ向かった。



私はテレビをつけながら、リビングで軽くメイクをしていた。



テレビは一切みていなかったが、音だけはなんとなく聞いていた。



すると、テレビで聞き覚えのある名前が呼ばれた。



『それでは、今週の新作図書は、桐崎朱一先生の「憧憬」です』



私は動きを止め、手にしていたマスカラを置いてテレビに近寄った。



テレビでは本の内容を説明していた。



テレビの片隅にでている顔は確かに昨日の桐崎と名乗った男だった。



「どこかで聞いたことあると思ったけど…作家なんて…」



彼の作品は全てアンハッピーエンド。いつでも悲しみに満ちた終わり方しかないらしい。



絵の才能もあるらしく、挿し絵も彼が描いているが、表紙も全てが白黒だった。


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