ペテン師の恋
「いらっしゃいませ、お待ちしておりましたよ。桐崎さん」




私もいつもの笑みを作り、一礼した。




「どうも」




間にいたボーイのケイが、クラブの中で一番綺麗なテーブルへと案内した。




「昨日とはやっぱり雰囲気違うね」




朱一は、乾杯を済ませたあと、私の頬に触れて言った。




「そうですか?今日は桐崎さん来ると思って気合いいれちゃったからかな?」




当たり障りのない会話。




だけど、彼はずっと笑みを崩すことなく、私をじっと見つめる。




「やっぱりNo.1は輝きが違うね。まるで人形のようだ」




彼は、私の髪の毛を撫でる。




本当の人形を撫でるように…




全然、私のペースにならない。




むしろ、彼は本当に私の心を見透かしているのか、余裕の笑みで私を見つめる。


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