ペテン師の恋
彼の隣に座ると、クラブのように彼は私の頬に触れ、顎を引っ張り、顔をそらさせないように力を入れられ、私の瞳と朱一の瞳がぶつかり合う。




「緊張してるのか?」




この笑み、私を苛つかせる。




こんな、道化師のような男にバカにされてたまるか!



私は強気な目差しで彼を見つめ返した。




「バカにしないで!私の素顔を見抜いたのは認めるけど、でも、そんなことで強気に出ないでほしいわ」




私は、自分の顎を持つ朱一の手を払いのけた。




そして、より強く彼を睨んだ。




彼は少しだけ、驚いた顔を見せたが、すぐにまた笑みを浮かべた。




負けたくない。




私の性格は根からの高飛車女だ。




プライド高く、誰よりも綺麗で居なければならない。夜の世界でずっとやってきた私が、男に弄ばれるなんてあり得ないんだ。



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