ペテン師の恋
ココアは普段私が飲むものとは違い、濃厚で甘かった。




今は、これくらい濃厚のほうが私には落ち着く。




「あなたは、私を知っているの?」




ふと、彼に問いかけてみた。




彼は少し笑い、


「知らないよ。君も僕を知らなかっただろ?」


と、言った。




「じゃあ、どうして?あなたは私を嫌ってるみたいだけど」




その問いには答えてはくれなかった。




「もう遅いし、今日は泊まるといいよ。シャワーは廊下でて左にある」




「ありがとう」




男の家に泊まることは慣れている。




だけど、何故だろう。
緊張している自分がいる。



私はタオルとバスローブを渡され、先にお風呂に入らせてもらった。



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