ペテン師の恋
広いお風呂は、なんだか一人で入るには寂しく感じた。




嗅いだことのない香りのシャンプーやボディーソープは朱一の香水だと思っていた香りだった。




その香りは何故か、私に安心を与えてくれる。






私がお風呂からでて、リビングへ行くと、お風呂に入る準備をしていた朱一が上半身を脱いでいた。




「お風呂、ありがっ…!?」



その後ろ姿を見て、私は呆然としてしまった。




「ああ、見られちゃったか…」




朱一の笑みをみて、わざと背中のタトゥーを見せたのだろう。




「どうして…」




彼の背中には私と全く同じ、朱色の蝶が描かれていた。




「僕も驚いたよ。まさか、同じタトゥーを入れてるなんて」




朱一は再びあの笑みを浮かべていた。




また、朱一のペースになってしまう。この笑みは私のペースを乱すんだ。




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