ペテン師の恋
街を歩いていると、チラシなど配っている人がたくさん駅前にいた。





普段はもらわないチラシだが、一枚だけ、目につき、自分から手を伸ばしていた。





「ありがとうございます」





チラシを配る女の子は笑顔で私に言った。





隅により、そのチラシをしっかりみてみた。





「やっぱり…」





そう、そのチラシは




『桐崎朱一・イラストギャラリー開催中』





真ん中には、モノクロで描かれた女性の姿があった。顔を見せないように髪で表情を隠した女性の横顔は、どこか悲しみを感じさせる。





場所は、今いる駅から二つ離れた美術館だった。





私は、迷うことなく美術館へ向かった。






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