ペテン師の恋
「お姫様って言うのやめてくれる?言われると、ムカつくの」





せっかく、楽しかったのに、その気分を壊された気になっていた。





朱一は、あからさまに変わった私の態度を見て、落ち着いた様子で、私の頭に手をのせた。





「悪かった。じゃあ、朱美は何食べたい?」





朱一は、そういって、しゃがんで私の顔を覗き込んだ。





いきなり、顔を覗き込まれると、逆に恥ずかしくなり、私は視線を外し、ぎこちなく答えた。





「和食が食べたい…」





「OK、いいとこ知ってるから、それで機嫌直せよ?」





私は、コクリと頷き、朱一が差し出す手を握った。





そして、絵をたくさんのせた機材車に乗り込み、私たちは美術館を出発した。





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