ペテン師の恋
「だから、私は母の友人である、今のクラブのママの元で生活するようになったってわけ、今はね、本当に寂しくないの。会うことはないけど、今も…幸せでいてくれたら、それが、私なりの親孝行だから…」






そういう私を、朱一は力強く抱きしめた。





「朱一さん…?どうしたの?」





驚きはあったけれど、彼の腕に安心した私は彼の背中に手を回した。





細いはずなのに、ガッチリしていて、力強い。





「朱一でいいよ」





朱一はそれだけつぶやくと、少しの間、無言で、ただ、私を抱きしめた。





このときの、あなたの心に気づけなくて、ただ、私は心地好い朱一の腕に身を委ねていた。





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