ペテン師の恋
逸る気持ちを抑え、私はあくまで、クラブ嬢の朱美として、優雅に歩く。





「いらっしゃいませ、桐崎さん」





私が笑顔で言うと、彼も仮面を纏った笑みを作った。





「久しぶりだね」





このとき、私はてっきり自分を指名されると思っていたんだ。






なのに…






「瑞希はいるか?」





えっ…





私も、ケイも聞きなれない名前に戸惑った。





瑞希はクラブの中でもあまり冴えない、一見真面目そうな女の子だった。





気が弱く、あまり女の子たちにもお客さんの評判も微妙な子だった。






どうして、私ではなく、瑞希を指名しているの?





私に会いに来たわけじゃないの?





私は、勘違いでお出迎えをしたことが恥ずかしくなり、すぐに違う席へと移動しようとしたときに、丁度、瑞希がやってきた。




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