ペテン師の恋
私の足音に気づいたママは、伝票を整理していた手をとめ、厳しい表情で私をみた。





「あんた、なんなの?その歩き方。お客様がみえてるのよ?」





そんなこと、分かっている。





当たり前の注意でも、苛立った私は素直になれなかった。





「分かってるわよ!今日は体調悪いから帰るから」





私は自分の荷物を持った。





「あんた何勝手なこと言ってるのよ!何があったかちゃんと説明しなさい!」





ママは私に怒鳴り、私の腕を引っ張り椅子に座らせた。





しかし、そのとき、店が騒がしくなり、ケイがバックへ入ってきた。





「桐崎様から全テーブルにドンベリプレゼントされました。他にも、シャンパン、ロマネ・コンティなど…」





私もママも唖然とした。





何が起こっているの?






今、言ったお酒だけでも何百万というお金が動いている。





私たちは、三人で急いでフロアへ向かった。





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