ブラックボード
「ていうことで私、姿も見れたし帰ろうかな~」
先生が何も言わなくなっちゃうから。
独り言のように喋りながら、笑顔のまま視線を窓の外からカバンにむける。
そして、三年間でボロボロになったカバンを、乱暴に持ち上げた。
「じゃーね。先生!」
先生からの、返事はなかった。
私の声だけが小さく宙を舞い、少しだけ響いて消える。
先生が何も言ってくれないから、私の体はもうそろそろ扉にたどり着いてしまう。
「…おい!」
待ち望んでいた、先生の声。
最後だからと意識することはなく、扉の前から後ろへ首だけを傾ける。