ブラックボード
だからこそ
「まだ、いたのか。」
後ろからスッと響いたのは、よく通る低い声。
耳に馴染んだその声のおかげで、私は一瞬で人物を特定できた。
「…先生。」
少しもじゃもじゃな黒い天然パーマと、くるんとした黒目がちな目が特徴的な
伊藤 隆史、先生。
私の、中学校生活最後の担任の先生。
「なにしに来たんですか?」
驚くように、…だけども騒がしくならないように、なるべく声を押し殺しながら、小さく先生に尋ねる。
誰も、来ないと思っていたのに。
こんなの予想外だった。